司馬遼太郎「人斬り以蔵」


 自己流の暗殺剣法を編み出し、盲目的な殺し屋として幕末の世を震えあがらせた岡田以蔵の数奇な生涯を描く表題作『人斬り以蔵』。日本陸軍建軍の祖といわれる大村益次郎の半生を綴った『鬼謀の人』ほか、『割って、城を』『おお、大砲』『言い触らし団右衛門』『大夫殿坂』『美濃浪人』『売ろう物語』。時代の変革期に生きた人間の内面を鋭く抉り、長編とはまた異なった人間理解の冴を見せる好短編全8編を収録する。
 表題作の以蔵のみのお話だと思っていたら短編集。以蔵の話は作中の犬の例えに尽きる。大村益次郎の話は「花神」を未読なので読んでみようと思わせるような内容。この短編の中では人の縁というものを考えさせる「おお、大砲」が何とも滑稽のような気がして面白かった。好きかな。