司馬遼太郎「世に棲む日日」

tagosaku2003-10-13



 嘉永六(1853)年、ペリーの率いる黒船が浦賀沖に姿を現して以来、攘夷か開国か、勤王か佐幕か、をめぐって、国内には、激しい政治闘争の嵐が吹き荒れる。この時期骨肉の抗争をへて、倒幕への主動力となった長州藩には、その思想的原点に立つ吉田松陰と後継者たる高杉晋作があった。変革期の青春の群像を描く歴史小説全四冊。
 幕末を長州藩の中心人物であった前半は松陰を後半は晋作を描く。維新を動かす志士を送り出した松下村塾の松陰が、観念主義であった長州という藩の中で早くに攘夷に見切りをつけた唯一の現実主義者であった晋作へバトンタッチ。志は違えど結果的には維新を回天させることに多大な影響を与えた二人の人物に、長州人のその純粋さの典型を見る。革命が3代に渡って成るという理論も興味深い。「おもしろきこともなき世もおもしろく」とんでもない辞世の句だよ。好き。