司馬遼太郎「幕末」


 万延元年三月三日朝、江戸城桜田門外で、春の雪を血で染めた大老井伊直弼襲撃など、十二の事件に幕末狂乱の時代を描く連作小説。
 幕末に起こった暗殺を描く。作中では井伊直弼の「桜田門外の変」、清河八郎の「奇妙なり八郎」、吉田東洋の「土佐の夜雨」あたりが有名だろうか。中でも剣の達人である桂(木戸孝允)が逃げに逃げ回るのを描いた「逃げの小五郎」が好きな話。あとがきで作者が暗殺だけは嫌いということと暗殺が歴史に寄与したものはない(桜田門外は別)と振り返っているのも面白いものだね。