井伏鱒二「多甚古村」

tagosaku2003-12-05



 甲田巡査の駐在日記の形で、南国の海辺の村、多甚古村に起った喧嘩、醜聞、泥棒、騒擾など、庶民の実生活が軽妙に描かれ、これに対するに、苦労人で平和を愛する甲田巡査の思いやりある暖かい心情を配置して、井伏文学独特の、山あり川ありといった人生縮図を展開させる。平俗の言葉を使って文体の気品、格調は高く、庶民を描きつつ庶民に溺れぬきびしさを持つ、代表的長編小説。
 有名な「黒い雨」や「山椒魚」を避けたわけではなく、ただこの本しか手元になかったので読んでみただけ。日記という形で構成されていて一つの日で完結しているためか、短編集的な印象を受けた。巡査の目線から村の人物達が人情味溢れていて面白い。随分と適当な感想でございます。好きかも。